YANO'S BLOG
不毛な「住宅ローンVS賃貸のどちらが得か?」論争の本質的な理由とは?
2019.09.02 家づくり成功のツボ 資産
日本人は、住宅リテラシーが低いと言われています。
 
リテラシーとは理解力、読解力を意味していて、住宅に対する理解力などが低いという意味です。
 
住宅リテラシーが低いと実際の住まいをいろんな意味で使いこなせない訳です。
屈辱的な話なのですが、これは事実として受け止めて今後どう取り組んでいくかが重要です。
 
日本人は、それ以外にもお金に対するリテラシーや人間関係に対するリテラシーも低いと言われていて、これらのリテラシーアップは、日本人の精神性を豊かにしていく上でもとても重要です。
 
最近、クライアントで作家の本田健さんが、HAPPY MONEYという本を出版されました。
 

【本田健氏の八ヶ岳研修センターの改修後風景】

 
この本は、アメリカ、イギリス、オーストラリアで6月にKEN HONDAとして、直接英語で書いた本が出版され、7月に日本でKEN HONDA著、本田健訳として出版。日本では、2週間で10万部突破するなど凄い勢いで売れている本です。
 

【happy money】KEN HONDA著 本田健訳

 
お金のリテラシーに関して、日本人にあるのは「使う、貯める、増やす」ぐらいです。リテラシーを高めるのにとても役立つ本ですのでオススメです。
 
さて、今回は、住宅リテラシーがなぜ日本でこれだけ低いのかを3つの理由にまとめました。特に、住宅リテラシーが高い、北欧などに建築視察に行ったときに強く感じな内容をお送りします。
 

その1 小さな頃から「環境」に対する大切さを肌身で学んでいない

まず、就学前の生まれてから6歳までの間ですが、日本の今と北欧とでは大きな違いがあります。それは就学前学校と北欧では言われている幼稚園(正式には就学前学校と言います)です。
 
夏8割 冬2割
 
この数字を見てあなたは何を想像しますか?
この数字は、学校に来ている間、夏は全体の時間の8割、冬は全体の時間の2割を外で過ごしている時間です。夏は、食事をするとき以外はほとんど外です。
 

【北欧の就学前学校の園庭風景 子供達は一日中自然の中で暮らします】


 
 
そして、驚くべきは冬の2割です。北欧は、冬場は白夜で、明るい時間が1日のうち5、6時間しかありません。その明るい時間帯のうち、食事をのぞいて夏と同様にほとんど外で時間を過ごします。
 
さらに驚くのは、「ー5度以上の場合は吹雪いていても外で遊ぶ」のです。
 
子供達はこの間に自然を通じて、「自然の凄さ」「自然のありがたみ」「自然の偉大さ」「自然の怖さ」などを体験し、自然に対する尊重の念を抱くようになります。木を一本伐採することに対しても、その感覚は同じです。
 
実は、日本にも昔は各地域に、怖い神様がいました。
「こら!そんな悪いことをすると、○○の神様が連れていってしまうぞ!」と、子供にいうと、子供達は悪さをピタッとやめます。
 
少し、形態は違いますが、同じです。現在の日本は、やはり自然に対しての肌身で持っての捉え方が、その当時と大きく違ってきています。
 
自然に生かされていること、そして、その自然から身を守る場所としての「住まい」。
 
自然とどのように共生できるか?
 
ここの発想は、幼少期に自然とともに過ごしたことによる自然に対する尊重の念から生み出されているのです。
 
 

その2 美しい場所に対しての価値を見いだせていない

日本以外の先進国では、住まいに対する優先順位の中に「その場所の美しさ」がベスト5に必ずランクインしています。しかし、日本では、「子供の学区」「通勤のしやすさ」など利便性が主体になっていて、上位5位までには「美しさ」は、入っていないのです。しかし、真に不動産価値の高い住まいは必ず「美しい環境」の中にあります。
短期的に人気が出るエリアには、それはなく、不動産価値が高い場所は永続的に美しい場所なのです。そのことに気がついている人はほんの一握りです。ここの価値観が広がれば、住宅リテラシーの底上げができると私は考えます。
 

その3 住宅が不動産であるという認識が薄い

住宅ローンと賃貸のどちらが得か?という議論は、「住宅は不動産として資産になりうる」という考えが抜け落ちている結果です。
 
しかし、それも仕方がありません。なぜなら、日本の住宅の9割以上が「不動産」ではなく、30年程度で寿命がくる「耐久消費財」だからです。
 
その結果、「30年払い続けても、土地の資産価値だけで、家の資産価値が0、それに対して住む場所に縛られずにほぼ同額で納まる賃貸の方が気楽」
 
というような考えが蔓延してしまうのです。
 
 
他の先進国では、よっぽどの理由がない限り30年しか持たない耐久消費財としての住まいに手を出しません。
なぜなら、「家は3世代をつなぎ、子孫の繁栄の礎になる」という考え方が他の先進国にはあるからです。
 
1代目で苦労してローンを組んだりなどして家を手に入れ、2代目でローンを払い終わり、家の手入れをしっかりとさせ、3代目で資産となった家を軸にさらなるステージアップを目指して行く。
 
こういう考え方が根付いているのです。
 

【代々資産として受け継ぐことを前提に設計した資産になる家の実例:広島市】

 
しかし、今の日本では、先ほど述べたように住宅ローンVS賃貸のように、本来の不動産としての住宅リテラリーが欠落しているのです。
 
3代先に続くような80〜100年持つ家を手に入れ、そして代々受け継いて行く。こういう生き方もあるんだということを知ってみてください。住まいに対する認識がガラッと変わるでしょう。
 
 
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この記事の著者
八納客創(やのけいぞう)
一級建築士 G Proportion Architects 代表。
「快適で居心地よく洗練されたデザイン空間」を探求している1級建築士。「孫の代に誇れる建築環境を作り続ける」をビジョンに、デザイン性と省エネ性、快適性を追求する一般建築を、そして住宅設計では「笑顔が溢れる住環境の提供」をコンセプトをもとに、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。