BLOG
注文住宅の間取りを決める際の4つのポイントとそれぞれの注意点
2021.02.19

注文住宅の間取りを決める際、何に気をつけたりしたらよいか、どこをポイントに考えたらよいのかわかりませんよね。

そこで、この記事では、間取りを決める際のポイントを4つに絞って解説します。また、工務店やハウスメーカーでは気付きにくい注意点を建築士の視点からご紹介します。

注文住宅の間取りを決める際の4つのポイントとそれぞれの注意点

注文住宅の間取りを決めるために、思慮したいポイントはたくさんあります。しかしここでは、間取りを決める上で特に大切なポイントを以下の4つに絞ってご紹介します。

 ・LDKの計画
 ・窓の計画
 ・収納の計画
 ・3種類の動線計画

注文住宅の間取りを決める際のポイント【1】LDKの計画

一般的には、「LDKは家のどの場所にしようか?」「どんな感じのLDKにしようか?」と、家の中についてのみ考えがちです。

しかし間取りを計画する上で、家の中を考えるだけでなく、自分の土地を取り巻く建物環境、太陽の方角や風の流れなどの自然環境も考慮しながら計画することが大切です。

このように間取り単独ではなく、家を取り巻く周辺環境にも視野を広げて計画することで、より良い住環境のLDKとすることができます。

「建物環境や自然環境も考慮した方がいいのはわかるけれど、気が遠いな…」とお感じではありませんか?ここでは特に大切な、具体的な注意点3つに的を絞りご紹介します。以下の注意点を押さえ、よりより住環境となるLDKの計画にお役立てください。

LDKの計画の注意点:周辺環境

あなたの土地の周辺環境はどのようになっていますか?

実は、自分の土地を取り巻く周辺環境をよくよく見ることで、どこにLDKを計画すればより良い住環境のLDKをつくることができるかは、自ずと導きだされます。

街中か郊外か、隣にはどんな建物が建っているか、人通りの多い道路なのか、それとも道路から奥まった静かな広い土地なのか。

工務店やハウスメーカーは、どのような敷地でも1階にLDKを計画するのが一般的です。しかし私の経験上、街中の敷地の場合、2階にLDKを計画する方が良いケースがあります。

街中の場合、LDKを2階に計画することで、窓やカーテンを閉めることなく過ごせたり、陽射しをたくさん取り込め、風が通り抜ける気持ちの良いLDKとなる場合があります。

LDKをどこに計画するかをまず始めに考えることは、間取りを決める上でとても重要です。その際に、「LDKは1階」の概念で間取りを考え始めるのではなく、「周辺環境をみた上でLDKをどこにするか」を計画する際の一つの指標に加えてみてください。

LDKの計画の注意点:1階LDKのメリット

LDKを1階にした場合のメリットは、メインの生活動線が1階になるので、外からの接続がしやすい、使い勝手が良いなどが挙げられます。

しかし、窓の外の景観がよくない場合や、人通りがある道路に面している場合は、レースのカーテンを閉めた状態でないと生活できないという状況になりかねません。

また3方向囲まれた敷地の場合、明るいLDKとすることが難しいです。

LDKを1階にしようとする際は、「1階に計画するメリットはあるのか」について注意すると良いでしょう。

LDKの計画の注意点:2階LDKのメリット

部屋の配置に熟考は必要ですが、きちんと計画できれば、日中カーテンを閉めずに過ごせ、道路の音もダイレクトに聞こえにくいLDKとすることができます。

また、三方向を囲まれていても、屋根に天窓をつけることで、日中ずっと明るい部屋にすることができるメリットもあります。

しかし、2階をLDKにすると、主な生活空間が2階になるため、宅配等の対応が面倒に感じます。1階の防犯が心配になる方もいらっしゃいます。

1階のLDKであれば、老後になっても、1階のみで生活を完結させることは可能ですが、2階をLDKにすると、老後の生活動線が大変に感じることがあります。ただ、こうしたデメリットの対策として、あらかじめホームエレベーターをつけておく、階段に昇降機をつけられるよう電源を設置しておくとよいでしょう。

2階にLDKを計画する場合は、上記のように、事前にデメリット対策も考えておく必要があります。2階をLDKにするメリットとデメリットのバランスを考え、ご自身にとってのより良いLDKの計画にお役立てください。

注文住宅の間取りを決める際のポイント【2】窓の計画

「窓の計画」について解説します。その中でも特に大切な、以下に焦点をあてて解説します。

 ・方位
 ・窓の個数
 ・窓の開閉方法
 ・ガラスの素材

窓の計画の注意点:方位

窓は、南側に大開口の窓をとるのが基本です。そして、窓とセットで「ひさし」をつけることが大切です。

夏は太陽高度(地平線に対する太陽の角度)が高いため、南側の窓に「ひさし」をつけることで、太陽光は室内まで射し込まず、夏の暑さをしのぐことができます。逆に、冬は太陽高度が低いため、ひさしがあっても太陽光を室内の奥まで取り込むことができ、部屋を暖かくすることができます。

昔の日本の家は、南に大きな窓をつけ、「ひさし」をつけることで、夏は涼しく冬暖かい『パッシブデザイン』の窓計画をしていました。この考え方は、日本の家づくりにおいて基本となる大切な考え方です。

南以外の3方位(東・西・北)の窓は、反対に小さくすることが大切です。東西については、太陽が側面からダイレクトに入ってくるため、家に大きな熱量をもたらします。

東側の窓は、朝日が射し込む気持ちの良いイメージがありますが、東側の窓面積が大きいと、夏場は朝から暑くなるので注意が必要です。

もし、東西方向に大きな窓をつくりたい場合は、Low-Eガラスの熱線反射タイプのガラスにして、夏の暑さを和らげる対策するといいでしょう。

北側の窓は、直射日光は入ってきませんが、窓面から熱が逃げるため、北側に大きな窓を設置する際は、光熱費がかかることを加味しておきましょう。

<h4>窓の計画の注意点:窓の個数</h4>

基本的に、部屋に2面以上の窓をとることが大切です。そして窓を開けた時に、どこから風が入り、どこに抜けるのかを考えましょう。

特にLDKは、2面に窓を設置し、風が通るようにしましょう。また、角部屋以外は2面窓の設置が難しくなりますが、その場合は、廊下側の扉を開けて、廊下の窓へと風が通り抜けるような計画にしておきましょう。

 

【知恵袋】「24時間換気」と「通風」は違う!

「24時間換気」は、家の中の二酸化炭素濃度を高くしないために、新鮮な空気にするために換気を促すものです。

「通風」は、風が通り抜け、人が感じる風の心地良さも含まれます。

「24時間換気」で空気を入れかえることと、「通風」で空気を入れかえることは、全く異なります。残念ながら工務店やハウスメーカーでは、こうした概念を一緒くたに捉えている場合も見受けられます。

風が通り抜けるような家にしたいのであれば、設計依頼する際に「窓を開けたら、風が通るような家にしてください」とはっきり伝えましょう。

 

窓の計画の注意点:窓の種類

窓のサッシには「アルミサッシ」、「樹脂サッシ」、複合型の「アルミ樹脂複合サッシ」の3種類があります。

断熱性・気密性が最も高いのが樹脂サッシですが、日本は従来アルミサッシしか使ってこなかったため、樹脂サッシに馴染みが薄いかもしれません。

他の先進国では樹脂サッシか木製サッシ主流で、アルミサッシはビル建築等でしか使われていません。海外の人から見たらなぜビルの素材を住宅に?と疑問符が浮かんでいることでしょう。

 

【コラム:日本の窓の考え方】

昔の日本の家は、屋根があり雨さえしのげれば十分という考えで、内と外を区切るのは、障子や襖程度でした。そして後に、襖や障子が「窓」に置き換わったという歴史があります。襖や障子の延長線上で「窓」が出来上がったため、日本では窓にそれほどの性能を求めていなかった背景があります。

それに対して他の先進国は、防犯から守るための分厚い壁に穴をくり抜き、そこに窓をはめ込む発想で「窓」が出来上がっています。そのため、もとから窓の防犯面や断熱気密性能に対する意識が非常に高かったといえます。

しかし日本でも、窓の性能に対する意識が高まり、2015年頃から樹脂サッシが普及しはじめました。販売当時はとても高額でしたが、2021年時点でアルミサッシとの金額差は1割程度です。これから家を建てるなら、多少高くても樹脂サッシを使うと良いでしょう。

樹脂サッシは、気密・断熱面で、アルミサッシの倍以上の性能があります。多少高くても、その後の光熱費で10年経たずにサッシ代を回収することができます。

「樹脂サッシ=プラスティック」というイメージを思い浮かべるかもしれませんが、これは誤りです。実は、樹脂サッシはアルミサッシより融点が高く、火事になったら先に溶け始めるのはアルミなのです。

樹脂サッシの耐久性も30年以上前から検証されており、アルミサッシと同等以上といえます。家の窓のサッシは、樹脂サッシ一択と言えるほどのレベルまできています。

 

窓の計画の注意点:窓の開閉方法

窓の開閉方法には、いくつか種類がありますが、目的や設置場所、方位などを総合的に考えて選ぶことが大事です。

一般的に「引き違い窓」が多く使われますが、引き違い窓は雨が降り込むため、設置場所には注意しましょう。バルコニーに出る場所や、掃き出し窓として向いています。

「横すべり出し窓」は、雨が降り込みにくい利点があり、ひさしがない小さな窓に向いています。 

「縦すべり出し窓」は、風をつかまえて家の中にとり入れてくれます。ひさしがないと雨が降り込むので注意が必要ですが、隣とのスペースが小さい場所に向いている窓です。

窓の計画の注意点:ガラスの素材

現在、住宅の窓ガラス素材の主流は、Low-Eガラスです。Low-Eガラスには大きく分けて、2種類あります。それは「熱線反射ガラス」と「断熱ガラス」です。

「熱線反射ガラス」は、ダイレクトに射し込む太陽の熱を、反射させるガラスです。このガラスは、東西の窓に向いています。

「断熱ガラス」は、熱線反射ガラスと比べると室内に熱を取り入れますが、断熱性能が高いため、室内の熱を外に逃さない特性があります。

南側の窓は、「ひさし」をつけた上で断熱ガラスにすると、夏の冷房の冷気を外に逃がしづらく、冬は太陽の陽射しの暖かさを室内にとり入れることができるため、一年を通して快適に過ごすことができます。

その他に、「透明ガラス」と「型ガラス」のガラスの種類があります。「型ガラス」は外から見えにくいため、カーテンを付けたくなく外からも見られたくないような場所で使うとすっきりした見た目になるので定在適所で使用すると良いでしょう。トイレの窓ガラスなどは、型ガラスにするメリットが大きいと思います。

注文住宅の間取りを決める際のポイント【3】収納の計画

注文住宅の収納計画では、今のご自身の収納物の量で収納計画を立てるのはやめましょう。現在の物の量を見直し、減らしつつ目安をつけて収納計画を立てることがポイントです。

それでは、以下の内容を中心に解説します。

・適材適所
・子供部屋の収納
・パントリー

収納の注意点:適材適所

収納のポイントは適材適所で、使う場所の周辺に収納物を片付けることが基本です。例えば、下着は脱衣場の近くに収納すると使い勝手がよくなるなどです。

納戸をつくる場合がありますが、一度物を入れたら二度と出さないような場所になってしまい、機能しない納戸になるケースが多くあります。納戸に頼った一点集約型の収納計画は注意が必要です。

また適材適所に収納がないと、ウォークインクローゼットなどが足の踏み場もない状態になってしまいます。適材適所で収納ができるように収納計画することを心がけましょう。

 

【コラム:収納と生活の質】

日本は他の先進国に比べて物の量が倍程度多いことをご存知でしょうか。日本は高度経済成長期に豊かになり、スクラップアンドビルドの使い捨ての価値観が広がり、手元に置く物が増えた背景があります。一方で他の先進国は、壊れても修理し愛用する発想で物を持ち続けます。

物にあふれている日本ですが、家を建てる際には、今の持ち物が本当に必要なものかどうかを見極めて処分することも大切です。「できるだけシンプルに!」という考え方は、クオリティの高い生活を送るためにはとても大切です。

物を減らす方法は、「捨てる」以外に「人に譲る」という発想もあります。私は、なかなか自分では捨てられない物を段ボールにまとめてガレージセールで無料でお譲りした経験があります。段ボール5箱ほどありましたが、ほとんどの物を持っていっていただきました。

新たな住居をきっかけに、シンプルな物の量で生活の質も向上させましょう。

 

収納の注意点:子供部屋の収納

子供が自分の部屋のレイアウトを考えたり、あれこれ飾りつけをすることは、空間をコントロールする能力を鍛える上でとてもいいトレーニングになります。またインテリアのセンスを磨くことにもつながります。

こうした考え方もあるということを知っておいた上で、子供部屋の収納計画を考えてみてください。その際、特に備え付けのクローゼットをつくるかについては、十分な検討が必要です。

子供部屋に備え付けの収納をつくった場合、部屋の模様替えやレイアウトに制限が出ます。6畳以下の部屋であれば、特に難しくなるので注意しましょう。

備え付けのクローゼットをつくらない場合は、子供が自分好みに自由にアレンジできるように、置き家具収納にすると良いでしょう。

子供部屋は「子供が寝る部屋」という意味付けだけではなく、子供が自分で空間をコントロールし自立を促すためのトレーニングの場でもあるんだ、という考え方で子供部屋の収納計画をしてはいかがでしょうか。

収納の注意点:パントリー

これから家を建てる場合、冷蔵庫の他に冷凍専用庫を置くことができるスペースを、初めから計画しておくことをおすすめします。

新型コロナで直面したように、食料のストックができるということはとても大切です。新型コロナの際には、冷蔵庫を買い足している家庭もあったようです。

キッチン周りに、冷蔵庫+冷凍専用庫も置けるスペースをパントリー計画とともに考えることが大切です。

注文住宅の間取りを決める際のポイント【4】3種類の動線計画

注文住宅の間取りを考える上で、以下の動線を考えることが大切です。

 ・家事動線
 ・生活動線
 ・衛生動線(隔離動線)

これからの時代、衛生動線(隔離動線)は特に重要なポイントになるのではないかと思います。それでは一つずつ詳しく解説していきます。

家事動線

家事動線は、基本的にシンプルで、家事をする際の移動距離を短くすることが大切です。例えば、洗濯動線においては洗濯機と干す場所を近くすることです。

また最近はPM2.5や黄砂の問題、冬の乾きにくさ等で室内物干し場をつくるケースが増えています。このような室内物干し場も家事動線の中に加えるとよいでしょう。

生活動線

リビングイン階段(リビングを通って2階に行く間取り)をよく見かけますが、一概に良いとは限りません。空調面積が増えてエアコンの効きが悪くなるため、リビングイン階段を作るなら高気密・高断熱設計にすることが必須です。

また、リビングイン階段で親子のコミュニケーションが図れるという考え方もありますが、リビングイン階段を設置したら親子のコミュニケーションがとれるというわけではありません。間取りに依存せず、普段から積極的にコミュニケーションをとろうとする意識が大切だと思います。

衛生動線(隔離動線)

これからの時代は、医療施設だけでなく住宅においても衛生動線(隔離動線)が重要になると思います。

感染症は家族の誰かが感染すると、家族全員に広がる可能性が高いのですが、家の設計段階から、人や物を隔離できるような衛生動線(隔離動線)を計画しておくことで、こうしたリスクを抑えることができます。

郵送物や宅配物においても、荷物を1日置いておくスペース(ウイルスは1日程度紙で活性状態にあるため)を玄関周りに計画しておくことで、感染リスクを低くすることが可能です。

今後、新型コロナウイルスのような感染症等が増えていくのではないかと言われています。家の設計段階から、感染症を防ぐ仕組みを計画しておくことも大切なのではないでしょうか。

まとめ:注文住宅の間取りを決める際の3つのポイントとそれぞれの注意点

間取りを考える際、一つ一つの細かなところに目が行き過ぎると全体を見失いがちです。窓・収納・動線などの「点」を考える前に、間取り全体を広く見ることが大切です。

このような専門家のコラムなど、俯瞰的な考え方を学んでから間取りを考えることは、家づくりを成功させる秘訣です。

私は、これまで設計のご縁をいただいた100人以上のご家族の思いや経験を熟成させて言葉にしています。この記事があなたの家づくりのお役に立てれば幸いです。