BLOG
注文住宅とは?メリット・デメリットを建売住宅と比較してみた
2021.03.01

 

注文住宅を検討する際、注文住宅のメリットとデメリットは何かを調べて、自分の家づくりの参考にしたいですよね。

しかし、注文住宅を「建てる」「購入する」ときのことだけに注目して比較検討するのでは、実は情報として足りていません。

家づくりは人生と直結しています。私は建築士として100件以上の注文住宅の設計に携わってきました。この経験をもって、より深く本質的な部分に迫って、建売住宅と比較しながら注文住宅のメリット・デメリットを解説します。

そもそも注文住宅とは?建売住宅・売建住宅との比較

注文住宅とは何かご存知でしょうか。建売住宅や売建住宅との違いに着目して、それぞれ詳しく解説していきます。

建売住宅とは

建売住宅は、土地の上にすでに家が建てられており、実際に建っている新築住宅を見て購入するものです。建売住宅の多くは、手に届きやすい価格設定で、あまり高額な建売住宅はありません。

売建住宅とは

売建住宅は、すでに土地に合わせた家の間取りが設計されており、土地と間取りをセットで購入するものです。購入者は家の完成イメージを見て、家が建つ前に契約をして購入することになります。

購入者が決まる前に間取りは決定されているため、工事が始まる前であっても、購入者の要望を組み込めるわけではありません。

また、売建住宅は土地と間取りのセットの販売のため、建ててから売る建売住宅よりも販売側のコストがかからず、販売側にとってリスクが少ない方法です。

注文住宅とは

注文住宅は、土地に一からつくり上げていくもので、自分たちの要望を入れることができます。自由度が高く、自分好みの素材やデザインを反映させることができます。

注文住宅のメリット

注文住宅のメリットを、建売住宅と比較しながら深く解説します。注文住宅か建売住宅か、どちらか迷われている方にとってもお役立ていただける内容です。

注文住宅のメリット【1】

注文住宅のメリットは、自分たちの思いを込めた間取りをつくることができます。設計士や工務店にもよりますが、デザインや素材も含めて自分たちの理想の方向性でつくることが可能です。これは注文住宅の醍醐味といえます。

建売住宅のデメリットは?

建売住宅はすでに建っている新築住宅を購入するため、好みの家であれば良いのですが、希望の素材やデザインの要望をお持ちの方にとっては、デメリットになります。

建売住宅は、商品化され、ローコストで建てられた家がほとんどです。例えば、床は複合フローリングの場合がほとんどなので、木そのものでできている無垢のフローリングを使った家が理想の方にとっては、妥協しなければならない場面も出てきます。

注文住宅のメリット【2】

風水や家相で整えた住宅を希望される場合は、注文住宅にするメリットが大きいと思います。風水や家相の専門家の知識を反映させたオリジナルの間取りを計画することが可能だからです。

建売住宅のデメリットは?

建売住宅で、風水や家相で考えられた住宅はありません。建売住宅は、経済効率を測った設計なので、玄関が欠けているなど風水・家相的に理にかなっていない間取りがほとんどです。

注文住宅のメリット【3】

注文住宅は、高気密高断熱で、省エネ性能が高い家をつくることができます。初期コストはかかりますが、光熱費などのランニングコストが抑えられるため、シュミレーションすると10年前後で元がとれる計算です。

日本の電気ガス代は高いため、このような長期のランニングコストを考慮して計画することは大切です。また日本人はお風呂で湯船に入るため、給湯費用にも注意しましょう。

高気密高断熱をうたっている会社であれば、光熱費の削減と設備投資費の差額のシュミレーションが可能なため、そういった資料作成をお願いしてみましょう。

高気密高断熱をアピールしているにもかかわらず、シュミレーションを出せない場合はやめておいた方が賢明かもしれません。

建売住宅のデメリットは?

建売住宅は、高気密高断熱の性能値が低い建物がほとんどです。それは省エネ性能を高くすると高額な建売住宅になってしまい、売れないリスクがあるためです。

しかし省エネ性能が低い家は光熱費がかかるため、長期のランニングコストを考えると高価格となってしまいます。建売住宅は注文住宅に比べると安く購入することができますが、家の性能面でのデメリットは大きくなります。

鉄筋コンクリート造のマンション4階以上に住んでいた方が、木造建売住宅に引っ越した初年は、冬の家の寒さに驚くそうです。それほど建売住宅の省エネ性能は低いのです。

注文住宅のメリット【4】

注文住宅を例えるなら、自分好みの生地を選び、体にぴったり合ったサイズのオーダーメイドの衣服です。

自分好みの素材やデザイン、自由な間取りでつくる注文住宅は、唯一無二、その家族のためだけの家なのです。より快適な暮らしを考える上で、大きなメリットといえるでしょう。

建売住宅のデメリットは?

建売住宅は、注文住宅に比べて安く手に入れることができます。衣服で例えると、数千円で手に入る衣類のイメージです。コストパフォーマンス重視で、標準的な仕様のため、あなただけの特別な一着とはなりません。

建売住宅は安く購入できるメリットがある反面、あなたの理想が全てそろった家に出会うことは難しいかもしれません。

注文住宅のデメリット

注文住宅にもデメリットはあります。デメリットを解消する手立てを学び、賢く家づくりを進めましょう。

注文住宅のデメリット【1】

注文住宅のデメリットは、おおむね建設費が高くなる点です。そのためある程度の予算と、自分たちの要望のバランスをしっかり把握しておく必要があります。

建売住宅のメリットは?

建売住宅は、基本的にコストを抑えて手に入りやすい価格帯にして住宅をつくっています。注文住宅に比べて安く家を購入できる点はメリットといえます。

注文住宅のデメリット【2】

注文住宅は、出来上がった家をみて購入することができません。建っていない家に対して、お金を払う決断をしなくてはならない側面があるため、いろんな意味で勇気が必要になります。

ただ、注文住宅は、ハウスメーカーであれば住宅展示場、工務店であればモデルハウス、設計事務所であれば完成披露会などで、類似の住宅をみて判断することができます。

さらに好ましいのは、工務店や設計事務所の場合、今まで建てたお客さんの家を見学させてもらうことです。家の設計をみるだけでなく、実際に暮らしている人の話や、工務店/設計事務所とお客さんとの関係性をみることが大切です。

工務店/設計事務所が、家を公開できるまでお客さんと信頼関係を築けているかの判断基準となる大切なポイントだと思います。

見学できない場合は、お客さんとの関係がうまく築けていない可能性が高いため、やめておいた方がいいかもしれません。

注文住宅のデメリットを解消するために、上記のテクニックを心得ておくと良いでしょう。

 

【豆知識:住宅展示場の維持費や経費は誰が払っている?】

ハウスメーカーの住宅展示場モデルハウスは無料で見学できます。しかしハウスメーカーで契約をして家を建てるに至った場合、自分の家の建設費用だけでなくモデルハウスの維持費や経費も家の費用も上乗せされることになります。その金額は約150〜160万円ともいわれています。

ハウスメーカーで家を建てようと思う方は、150~160万円かけてモデルハウスの見学しているという意識でないと、本当にもったいないですよ。

 

建売住宅のメリットは?

上記の注文住宅のデメリットに対して、建売住宅は、建っている家を実際に見学して購入することができるメリットがあります。焦らず細部まで確認して購入することが大切です。

注文住宅のデメリット【3】

注文住宅のデメリットは、造り手の人の当たり外れがあることです。注文住宅での家づくりは、契約・設計・建築・アフターフォローと、長期間の関係になります。そのため造り手と自分との相性がとても大切になります。

家づくりの失敗の例に「施工会社の工事責任者との相性が良くなかった」、「工務店の社長との相性が悪かった」、「現場の工事が始まってからどんどん予算を追加されてしまった」などのコメントを見かけます。

設計事務所で家づくりをする場合は設計事務所の代表と自分の相性、工務店で家づくりをする場合は工務店の経営者との相性をよくみてから判断しましょう。営業マンが対応する会社であっても、社長と直接会って話をする機会をもらいましょう。

また家族や夫婦で、相手の第一印象を話し合うことも大切です。肌が合わないかもしれないと感じた場合は、初めのフィーリングを大切にしつつ、再度会って確認し、納得した上で決断しましょう。

ハウスメーカーで家を建てる場合には、営業マンとの相性が大切です。ハウスメーカーの営業担当は、住宅展示場を見学した際に最初に対応してくれた営業マンが、その後も担当になるケースがほとんどです。自分で選ぶことができないので、レベルの低い営業マンが担当になる可能性もあります。

ハウスメーカーでの家づくりを成功させるために、営業マンの経験・能力値はとても大切です。可能であればハウスメーカーで家を建てた知り合いに、優秀な営業マンを紹介してもらうと良いでしょう。また、地域のトップセールスマンを直接紹介してもらえるのであれば、その営業マンに担当してもらうことです。

建売住宅のメリットは?

建売住宅は、上記の注文住宅のような「相性」に関して、それほど気にする必要がないことがメリットです。

注文住宅と建売住宅:プロが教える選び方

注文住宅・建売住宅のメリットデメリットをご紹介しましたが、実際に自身がどちらに向いているのか、家族にとってどちらが良いのか迷った際は、以下の判断基準を参考にしてください。

注文住宅と建売住宅選択の判断基準は?

建売住宅の家の仕様は、30年ほどで建て替えなければならない、もしくは大改修しなければならないレベルでつくられています。それは価格を抑えてつくっているためです。建売住宅を住宅ローンで35年返済したとしても、その後改めて改修費用が大きくかかることになるのです。

例えば、建売住宅を2,000万円で購入できたとしても、30年後も同じように住めるようにするために、水廻りや外壁など修理をすると1,500万円くらいはかかります。

建売住宅は購入時は安く見えますが、家の寿命は30年ほどなので、人生でもう一度、老後に大きくお金がかかることになるのです。そのために貯金をしておく必要があります。

こうした注意点を知った上で、建売住宅なのか、もしくは1,000万円ほど高くても注文住宅にするのかを判断すると良いでしょう。

ただし注文住宅でも、長期優良住宅の家づくりをする会社や、70年・80年と建物が長くもつような家づくりをしている会社を選ぶようにしましょう。

注文住宅を選ぶ場合のアドバイス

注文住宅であっても、設備や外装などのメンテナンスは必要です。例えば、ガス湯沸かし器などの設備機器は、約20年ごとに交換が必要になります。この際、建物本体がしっかりつくられている家であれば、費用を抑えたメンテナンスの補修ですみます。

注文住宅で家づくりをする場合は、30年後くらいまでのメンテナンス計画や費用なども出してもらうと良いでしょう。

建売住宅を選ぶ場合のアドバイス

建売住宅を選ぶ場合は、30年後の改修工事に備えて建設費の3/4くらいの費用を積み立てておくと良いでしょう。

改修工事をしたくても、家のメンテナンス費用を蓄えておらず、泣く泣く暮らしている方もいらっしゃいます。

個人的な意見ですが、寿命30年ほどの建売住宅よりも、中古5〜10年くらいの築浅マンションを検討した方が良いのではないかと思います。

「家」について学ぶべきこと

他の先進国はお金のことや住宅のことを子供の頃から学んでいます。「無料ほど怖いものはない」という考え方もあります。

日本の住宅展示場は無料で見学することができます。その代わりに、住宅展示場の維持費などは、そのハウスメーカーで建てた人の家の費用に150〜160万円ほど計上されます。

しかしドイツでは、大きな工務店が集まって住宅展示場をつくる場合、入場料3,000円程に設定してテーマパーク化して見学してもらいます。

他の先進国では、「無料」の言葉の裏側で、どのようにお金が動いているのかをきちんと見る教育を受けています。日本は、そのようなお金の教育を受けていません。

無料で間取りを提案してもらえるハウスメーカーや工務店がありますが、本当に無料なのでしょうか。無料ではありません。この費用は、契約した人の家の建設費用に計上されています。一見無料に見えるものであっても、お金はそのように動いています。

しかしハウスメーカーにも、設計事務所や工務店にはないメリットがあります。それは、営業マンが最初から最後まで担当でついてくれることです。住宅ローンも営業マンが段取りしてくれるため、とても安心感があります。

ハウスメーカーのブランド力に魅かれる方にとっては、家づくりを任せる大きな安心感となるでしょう。

「家」の資産価値

1960年代、日本は戦後の経済復興のために、たくさんの家を造り、1家族に1つの家をつくっていこうとする流れをつくりました。具体的には民間企業に投げかけ、多くの家をつくろうとする企業を後押しました。この背景で誕生したのがハウスメーカーです。

ハウスメーカーは、住宅展示場や広告、無料の間取り提案など、一見すると無料に見えますが、これら多額の経費は、全て契約した購入者の家の建設費に上乗せされています。

例えば建設費が3,000万円のハウスメーカーの住宅の場合、家の建設費が1,500万円、残り1,500万円がハウスメーカーの経費といわれています。ハウスメーカー住宅は、とても経費率の高いビジネスモデルといえます。

日本以外の先進国は、家を不動産価値の対象として購入します。そして、経費がのっている家は価値が低いと判断し、購入対象となりません。

日本よりマネーリテラシーの高い他国では、売るときのことを考えて不動産を購入しているのです。

このように投資したお金が家の不動産価値になっているのかを意識して、家づくりをすることをおすすめします。

「家」は耐久消費財?

海外では家は不動産価値ですが、日本の家の多くは耐久消費財の一つになってしまっています。つまり、寿命がある冷蔵庫やテレビ、エアコンのように、家も消費財の商品と同じ認識ということです。

耐久消費財の家は、建売住宅だけでなく、一部の注文住宅にも当てはまります。不動産としての家をつくるのか、耐久消費財の家を買うのか、全く概念が異なります。

どちらが良い悪いということではなく、それぞれのメリット・デメリットを知った上で、適切な選択をすることが大切だと思います。

 

【豆知識:メンテナンスフリーは、使い捨て】

「メンテナンスフリー」はどのような素材のことかご存知ですか?メンテナンスフリーは、使い捨ての素材なのです。日本人は、メンテナンスフリーを好む傾向にあります。

逆にメンテナンスできる素材は、ずっと使いこなせる素材です。ですから私は、家づくりのお手伝いをする際、メンテナンスができる素材を選ぶことをおすすめします。

例えば、ビニールクロスはメンテナンスフリーの素材ですが、10~15年ほどで汚れたりノリが剥がれるためみすぼらしくなります。その際は、一部を補修するのではなく、全部剥がして新たに貼り直すことになります。

逆に漆喰や塗装などの塗壁は、汚れても部分的に補修することができるため、メンテナンスしながら長く使い続けることができます。

薄い板をノリで合板に貼り付けた複合フローリングは、20年ほどで隅から剥がれてしまい、新築当初の綺麗な見た目は徐々に失われていきます。複合フローリングはこれ自体を修繕することができないため、きれいに補修するためには、上から新たなフローリングを貼り直す必要があります。

これに対して、本物の木でできている無垢のフローリングは、表面が痛んだ場合でもサンダーで削りオイルを塗ることで、新品同様に仕上げることができるのです。

建売住宅は、使い捨て材料の組み合わせです。しかし、次に修繕する際にメンテナンスできる素材に入れ替えていくことで、使い続けられる家にすることができます。愛情を注いで上手にメンテナンスし続けることで、30年後の改修で補修する量を減らすこともできます。

 

「家」を育てる

家はつくったら終わり、買ったら終わりではありません。自分たちの暮らしの場を愛情を込めて「家を育てる、共に育つ」という気持ちで、上手にメンテナンスしながら付き合い続けることが大切だと思います。

あなたが家づくりする際には、完成して終わりでなく、観葉植物を育てるような気持ちで、あなたの家を育て続けてください。