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- エコハウスとは?環境にやさしい住宅の基礎知識と課題
環境にも家計にもやさしいエコハウスを建てるために、知っておくべき基礎知識や考え方、課題があります。
その中でもこちらの記事では、エコハウスのテーマとはどのようなものがあるのか、エコハウスのメリットとデメリットを、住宅の基礎知識を交えながら紹介しています。
Contents
エコハウスのテーマ3+α
エコハウスを建てる際に考えるべきテーマ3つと+α、計4つのテーマについてお伝えします。
・エコハウスのテーマ1:環境基本性能の確保
・エコハウスのテーマ2:自然・再生可能エネルギー活用
・エコハウスのテーマ3:エコライフスタイルと住まい方
・エコハウスのテーマ+α:地域らしさ
【日射遮蔽・日射取得に考慮したバルコニーや屋根設計】
環境基本性能の確保【エコハウスのテーマ1】
環境基本性能とは、住宅に求められる基本的な性能のことです。
環境基本性能を確保したエコハウスを実現するためには、日本の住宅ではまだまだ基準が低いと言われている以下の「8つのポイント」を十分に考慮する必要があります。
この8つのポイントは、環境省の取り組むエコハウスモデル事業でも重要なポイントとして掲げられています。
・断熱
・気密
・日射遮蔽(しゃへい)
・日射導入
・蓄熱
・通風
・換気
・自然素材
それぞれどういった意味を持つのか、エコハウスの実現へどのように関わりがあるのか紹介していきます。
断熱 |
断熱とは熱を伝わりにくくすることです。断熱性能を高くすることにより、夏は涼しくて冬は暖かい快適な家を実現できます。 |
気密 |
機密とは、空気などの流れを遮断することです。高気密とは建築部材同士の隙間を極力無くし、不必要な空気の出入りを少なくした状態のことを言い、冷暖房エネルギーの削減につながります。 |
日射遮蔽 |
日射遮蔽とは、窓から入ってくる太陽熱を遮ることです。日射を遮蔽することで、特に夏期は冷房エネルギーの削減につながります。 |
日射導入 |
日射導入とは太陽光をどのくらい室内に入れるかということです。高断熱・高気密の住宅で日射取得量を大きくしすぎてしまうと、室温がオーバーヒートしてしまいますので注意が必要です。 |
蓄熱 |
蓄熱とは暑い時に熱を蓄え、寒くなった時に熱を取り出して使用することです。蓄熱性能を高くすることで、室内温度が外気温度に左右されにくくなり、冷暖房エネルギーの削減につながります。 |
通風 |
通風とは室内の空気を流通させる風通しのことです。窓などの開口部を開放して自然換気を行うことで、夏場の冷房エネルギー削減にもつながります。 |
換気 |
建築物において、自然換気以外の換気方法は「第一種換気」「第二種換気」「第三種換気」の3種類あります。主に住宅で使われるのは「第一種換気」と「第三種換気」の2つで、この換気方法の組み合わせにより、室内温度が外気温に左右されにくい快適な空間を保つことができます。 【第一種換気】 給気・排気ともに機械で行う換気方法です。安定した空気の循環と室内の温度を管理できますがコストがかかります。 【第二種換気】 給気を機械で強制的に行い、排気は自然に任せる換気方法です。病院の無菌室や工場のクリーンルームなどに多く使われます。 【第三種換気】 排気を強制的に機械で行い、給気は自然に任せる換気方法です。外気が自然に入ってきてしまいますので、外気温によっては室内温に影響が出やすくなってしまいます。また、住宅の気密性が低い場合、意図しない隙間からも空気が流れ込んでしまうことがあります。 |
自然素材 |
建築素材に化学物質を使用していない自然素材を使うことです。自然素材を使用すると、建築時のCO2の排出を抑え、自然に対する負荷への軽減につながります。また、住む人の健康被害への心配も減らすことができます。 |
【LDKと2階ホールを吹き抜けを介して通風する計画の例】
自然・再生可能エネルギー活用【エコハウスのテーマ2】
エコハウスとは、生活に必要なエネルギーはできるだけ化石燃料に頼らず「自然エネルギーを最大限に利用できる家」であるべきです。
そのためには、太陽光、太陽熱、風、地中熱、水、バイオマス、温度差を上手に生かす技術や工夫が必要となるでしょう。
風、地中熱、水、バイオマスはかなり特殊条件となるため住宅に取り入れる事は容易ではありませんが、太陽光や太陽熱のエネルギーであれば住宅に生かすことが可能です。
例えば、家の屋根などにソーラーパネルを取り付け、昼間の太陽光で蓄電し、生活に使う電力を自給自足できる太陽光発電というシステムがあります。
また、太陽熱を利用して給湯器を可動させる太陽熱給湯というシステムもあります。
いずれも、CO2削減効果と経済性に優れるクリーンエネルギーであり、住宅に取り入れやすいので、エコハウスを建てる際は視野に入れてみてはいかがでしょうか。
エコライフスタイルと住まい方【エコハウスのテーマ3】
エコライフスタイルとは、環境に配慮した暮らしのことです。
エコハウスを実現させることは、エコライフスタイルへの提案の一つと言っても良いでしょう。
エコライフスタイルへの取り組みとして、地球の温暖化を防ぐために日常生活の中で省エネルギーに気を配ることが挙げられます。
また前の章でお伝えしたように、家庭のエネルギーを太陽光や太陽熱などの再生可能エネルギーに切り替えていくことも有効です。
そして、住まいの場所選びにおいても、都市部ではなく敢えて自然豊かな地方を選ぶことがエコライフスタイルにつながるという考え方が浸透しつつあります。
なぜなら、都市機能や住居を都心集中型から地域分散型へと移行することは、ヒートアイランド現象の抑制となるからです。
ヒートアイランド現象とは、都市部の温度が周辺の郊外に比べて高温になりやすくなる現象のことです。 主な要因として、都会は熱を吸収しないコンクリートやアスファルトが多いこと、密集した建物により風通しが悪いこと、建物や工場の排熱が増加していることが挙げられます。 実際に、100年間における気温上昇は中小規模の都市部では1度、東京都では3度も上昇しています。 |
昨今、世界的パンデミックを契機に在宅ワークやテレワークが多用されるようになり、都市部から離れた自然豊かな場所に家を建てる方が増えたことで、地域分散型への流れが進みつつあります。
世界的パンデミックの裏側には、このような環境に良い方向での一面がある事は事実なのです。
環境を考えた住まいの場所選びは、今後のエコライフスタイルの一つとなるでしょう。
地域らしさ【エコハウスのテーマ+α】
エコハウスを建てる際は、地域の気候風土を読み解いて、その土地にふさわしい断熱気密設計や自然エネルギーの活用をすることが効率的です。
例えば、年間日照時間が長いエリアにエコハウスを建てる場合は、太陽光発電や太陽熱給湯を取り入れることが非常に効果的です。
このように、地域の特性を生かした再生可能エネルギーの活用方法などを熟考することでより快適なエコハウスを実現できるのです。
エコハウスの課題
こちらの章では、エコハウスを建てる前に知っておきたい課題として、エコハウスのメリットとデメリットについて紹介します。
エコハウスのメリット
エコハウスは、冬は暖かく夏は涼しい快適な家を実現しますので、住む人の健康維持やストレス軽減につながります。
さらに、エコハウスのメリットは光熱費高騰に対する影響を受けにくいところにあります。
現在の世界情勢を考えると、今後光熱費の高騰が予想されます。
一般の住宅であれば光熱費が生活費を圧迫しかねない状態になりうる可能性がありますが、エコハウスは住まいに必要なエネルギーを最小限に抑えた住居ですので、高熱費高騰の影響を極力抑えることが可能です。
また、一般住居と比べてエコハウスの初期投資でかかる費用は、光熱費の差額で計算すると約10年あれば回収できるケースが多く、10年目以降は経済的に暮らすことが可能となります。
長い目でみても、エコハウスを建てることは資産性の高い住宅を持つということに他ならないのです。
エコハウスのデメリット
エコハウスを建てるデメリットとしては、エコハウスを建てる事ができる会社の選択肢が狭いということが挙げられます。
エコハウスのことを十分に理解していない施工会社、設計事務所がまだまだ世の中には多いのが現状です。
エコハウスを実現するためには、パッシブデザイン(風や太陽熱、太陽光などの自然の力を利用した設計技術)への十分な知識や、計画段階での光熱費のシュミレーションが必要となります。
どの会社でもエコハウスが建てられるというわけではなく、エコハウス建築への知識や経験が豊富であり、光熱費のシュミレーションができる会社でないと、快適なエコハウスを作ることは難しいのです。
では、どのように会社を探すべきかという点ですが、「省エネ住宅」「エコハウス」「パッシブデザイン」などのキーワードから探すことのできる一般社団法人に属していて、十分に勉強している会社から選ぶことが望ましいでしょう。
【内装に自然素材の塗料、無垢材を使用した例】
サマリー:エコハウスとは?環境にやさしい住宅の基礎知識と課題
この記事では、環境にやさしいエコハウスを実現するために考えるべきエコハウスのテーマやエコハウスのメリット、デメリットを、住宅の基礎知識を交えて紹介しました。
エコハウスを建てる際のテーマとしては、環境基本性能を確保すること、自然・再生可能エネルギーの活用を視野に入れること、エコライフスタイルと住まい方について検討すること、また地域らしさを十分に生かした設計をすることが重要です。
エコハウスは環境に優しく、快適で資産性が高いというメリットがある一方で、建てることのできる会社が少ないというデメリットがあります。
施工会社や設計事務所選びは、エコハウスを建てる際のいずれの課題にも大きく関わっていますので、施工主にとっては快適で資産性の高いエコハウスを実現するための最も重要な課題であると言えるでしょう。
また、こちらの記事ではエコハウスを建てる前に知っておくべき基礎知識として「間取り」「断熱材」「坪単価」についても具体的なポイントを交えて紹介しています。
⇒エコハウスを建てる前に知っておきたい間取り、断熱材、坪単価
最後までお読みいただきありがとうございました。