
朝、起きたときに、前の日より体が重い。
そういう家があります。
一級建築士として30年以上、住宅を約130棟設計してきて、私が最後まで手を抜けないと思っている場所が「床」です。
床は、家の中で最も長く体に触れ続けている建材だからです。
言ってみれば、床は24時間握り続けている握手の相手です。
相手の手が硬くて冷たければ、こちらも知らないうちに力が入る。
体温のある手なら、握っているうちに肩の力が抜けていく。
一日の三分の一を寝て過ごし、残りの時間も立ったり座ったりしながら、私たちはずっとその相手と手を握っています。
床材を「見た目の好み」で決めてしまうのは、握手の相手を写真だけで選ぶようなものです。
無垢フローリングと複合フローリングの上で前屈すると、何が変わるのか
これは私自身が実際にやったことです。
無垢のフローリングの上に立って、前屈をする。
次に、複合フローリングの上で、同じように前屈をする。
道具も測定器もいらない、それだけの検証です。
結果は、無垢の床の上のほうが、体が深く曲がりました。
私だけではありません。
仲間の設計者数人と一緒にやっても、別の場所で試しても、その場にいた全員に同じ差が出ました。
| 項目 | 無垢フローリング | 複合フローリング |
|---|---|---|
| つくり | 木そのものを一枚の板に加工したもの | 合板をのりで貼り合わせ、表面に薄い化粧材を貼ったもの |
| 分類 | 天然素材 | 新建材(工業的に接着してつくる建材) |
| 前屈したときの体 | 深く曲がる | そこまで曲がらない |
| そこから読み取れること | 体の緊張が解ける | 体が緊張した状態になる |
| 確かめ方 | 両方の床の上で同じ前屈をするだけ。両方の素材のあるショールームでもその場でできる | |
前屈で曲がる量は、その日の柔軟性というより、体に緊張が残っているかどうかの指標です。
つまりこの差が意味しているのは、無垢の床は体の緊張を解いてくれるのに対して、新建材の床の上では体が緊張したままになる、ということです。
プラスチック製品に囲まれた部屋に入ると、なんとなく落ち着かない。
多くの人が経験しているあの感覚と同じことが、体との接触時間が一番長い「床」という面で、毎日24時間起きています。
では、床を無垢にすれば、それで体は整うのか
私の答えははっきりしています。
床は無垢にしてください。
壁と天井も、できる範囲で天然素材にしてください。
11年ほど前に設計した住まいでは、床は無垢のフローリング、壁と天井は純粋な紙でできた紙クロスで、新建材を一切使っていません。
素材を天然のものに寄せるだけで、部屋の中の緊張感は確実に変わります。
ここで一つ、現実的な話をしておきます。
「床は無垢にしたい」と言ったときに、その要望がそのまま通るかどうかは、どこに頼むかで変わります。
標準仕様が決まっている会社では、無垢材は「オプション」として扱われ、面積を減らす方向の話になりがちです。
依頼先による違いは、ハウスメーカー・工務店・設計事務所、どこに頼むかで迷ったら何を基準に選べばいいかにまとめています。
ただし、素材だけを整えても、体がゆるまない家はあります。
私が家づくりで実際に押さえているのは、全部で5つ。
素材は、そのうちの2つ目にすぎません。
そして順番があります。
1つ目を外すと、無垢の床を張っても、その効果はほとんど消えます。
床材の話をここまで書いておきながら妙な言い方に聞こえるかもしれませんが、これは私が実務で何度も確認してきた順番です。
その1つ目が何なのか。
そして残りの3つ——うち2つは、正直「そこまでやるのか」と思われるものです。
このあたりは文字より映像のほうが伝わるので、動画で話しています。
▼動画はこちら
家にいるとどんどん元気になる家のつくり方(八納啓創の建築LABO)
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一級建築士 株式会社G proportion アーキテクツ 代表。






