YANO'S BLOG
家相を取り入れると間取りの自由度は下がるのか|設計者の実務での答え
2026.07.22 家相 風水

「家相を取り入れたい。でも、そのせいで好きな間取りにできなくなるのではないか」。

家づくりの相談で、この心配は本当によく聞きます。

先に答えを言います。
家相を理由に、住まい手が間取りを我慢する場面は、実務ではほとんど起きません。

私は一級建築士として30年以上、約130棟の住宅を設計してきました。
そのほとんどに家相を組み込んでいますが、家相と要望が真っ向からぶつかったことは数えるほどしかありません。

なぜぶつからないのか。
設計の実務から説明します。

なぜ家相を入れても間取りの自由度が下がらないのか

自由度が下がるかどうかは、家相を「いつ」入れるかで決まります。

出来上がった間取りをあとから家相でチェックすると、必ず直しが発生します。
トイレを動かし、玄関をずらし、そのたびに動線や採光が犠牲になる。

これが「家相を入れると間取りが不自由になる」と言われることの正体です。

鑑定士に間取りを見てもらい、その指摘を設計者が図面に反映する、という進め方では、この後退戦から逃れられません。

一方、要望を伺った段階から設計者自身が家相を織り込んで間取りを組み立てると、直しがそもそも発生しません。
水回りを鬼門線から外す、家の重心を正確に取る——こうした判断は、動線や採光の検討と同時に行えるからです。

私の事務所にいらっしゃる方の多くは、家相に詳しいわけではありません。
ご要望を伺い、こちらで家相が整うようにプランニングします。

出来上がった間取りは、「家相的にこういう強みがある間取りになっています」というコンセプトと一緒にご説明します。
このとき、多くの方が強くうなずいて納得されます。

自分の要望が叶っていて、家相の裏付けまである。
我慢する要素が、どこにもないからです。  

「中庭が欲しい」は家相では大凶。それでも諦めなくていいのか

要望そのものが家相と正面から矛盾するケースも、まれにあります。
代表例が中庭です。

建物の中央に庭を抜く中庭は、家相では大凶とされます。

以前、「家相は大切にしたい。でも中庭のある家にしたい」という方がいらっしゃいました。

こういうとき、私は要望の「形」ではなく「中身」を聞きます。
なぜ中庭にしたいのですか、と。

すると多くの場合、答えは「囲まれた感覚の庭が欲しい」なのです。
建物の真ん中をくり抜きたいわけではなく、外からの視線を気にせずくつろげる庭が欲しい。

それなら、建物と塀で囲むかたちの庭でも実現できます。
家相を崩さずに、望んでいた暮らしはそのまま手に入ります。

間取りの要望の多くは、形の要望ではなく、暮らし方の要望です。
形を一度ほどいて暮らし方まで戻れば、家相との衝突はほとんど消えます。 

間取りの変更要望には何が表れるのか

家相の完成度を高めた間取りをご提案したあと、変更の要望をいただくことがあります。
多いのは「この部屋とこの部屋を入れ替えたい」というものです。

私はこのとき、間取りの話と同時に、そのご家族の状態を静かに読み取ります。

例えば、本来はご主人の場とすべき場所に子供部屋を設けたい、という要望が奥様から出たとします。
その背景を読み解くと、家族が子供に振り回されがちになっているケースが少なくありません。

もちろん、そのことを指摘はしません。
ただ、ご家族の暮らし方について話し合ううちに、自然と元のプランに戻ることが多いのです。

家相の整った間取りでは、家族それぞれの居場所が収まるべきところに収まっています。
そこを崩そうとする力が働くときは、間取りではなく暮らしの側に理由があることが多い。

これが、長年住まいを設計してきた私の実感です。

なぜ間取りにここまで家族の状態が表れるのか。
その背景は家相は迷信なのか、それとも統計なのかで詳しく書いています。  

それでも意見が合わないことはないのか

少ないですが、あります。

私の事務所では、本契約の前に有料の企画提案という段階を設けています。
ここで間取りの方向性と、お互いの相性を確かめてから本契約に進む流れです。

考え方がどうしても合わない場合は、この段階で終了になります。
だから、本格的な設計に入ったあとで家相をめぐって揉めることは、まず起きません。

「家相で間取りが縛られないか不安」という方ほど、契約前に間取りの方向性を確認できる進め方の設計者を選ぶことをお勧めします。  

自由度を下げるのは家相ではなく、取り入れる順序

家相をあとからのチェックに使えば、間取りは削られ、自由度は下がります。

設計の最初から織り込めば、要望と家相はほとんどぶつかりません。
ぶつかったように見える要望も、中身をほどけば両立できるものが大半です。

家相は、間取りを縛るルールではありません。
順序を間違えなければ、要望を叶えながら家族の暮らしを整えてくれる、設計の道具です。

なお、家相と風水は似ているようで別のものです。
違いは家相と風水の違いは何かで詳しく整理しています。  

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この記事の著者
八納啓創(やのう けいぞう/本名:八納啓造)
一級建築士 株式会社G proportion アーキテクツ 代表。
「快適で居心地よく洗練されたデザイン空間」を探求している1級建築士。「孫の代に誇れる建築環境を作り続ける」をビジョンに、デザイン性と省エネ性、快適性を追求する一般建築を、そして住宅設計では「笑顔が溢れる住環境の提供」をコンセプトをもとに、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。